イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業、スペース Exploration Technologies Corp.(スペースX)の新規株式公開(IPO)が、2026年6月12日に米国ナスダック市場で予定されています。ティッカーシンボルは「SPCX」となる見通しです。

目標とされる時価総額は最大2兆ドル(約318兆円)とも言われ、人類史上最大規模のIPOとして世界中の投資家から熱い視線が注がれています。
本記事では、これまで機関投資家の独壇場だった超大型IPOに、日本の個人投資家がどのように参加できるのか、楽天証券やSBI証券を使った具体的な応募方法、NISA(少額投資非課税制度)の活用戦略、そして公開された目論見書から読み解く事業リスクまでを徹底解説します。
スペースXの上場(IPO)概要と史上最大の規模
今回のスペースXのIPOは、金融市場における歴史的な転換点となります。最大750億ドルから800億ドルの資金調達を目指しており、2019年のサウジアラムコを抜いて史上最大のIPOとなることが確実視されています。
特筆すべきは、イーロン・マスク氏の主導により、公募株式の最大30%を個人投資家(リテール層)に割り当てるという異例の戦略が取られている点です。これは、短期的な利益を狙う機関投資家よりも、ビジョンに共感する長期的なファンを株主に迎えることで、上場後の株価を安定させる狙いがあります。
このグローバルな配分戦略において、日本市場を統括するのがみずほ証券です。これにより、みずほ証券と提携する楽天証券、および国内最大手のSBI証券を通じた個人投資家への販売ルートが確立されました。
日本からスペースXのIPO株を買う方法
日本の個人投資家がスペースXのIPOに参加し、上場前の「公募価格」で株式を手に入れるためには、対象の証券会社でブックビルディング(需要申告)に参加し、抽選を通過する必要があります。

楽天証券での応募ルールとメリット
楽天証券は、すでにスペースXを米国株式IPOサービスの対象銘柄として取り扱うことを発表しています。
- 対象口座: 一般口座、特定口座、NISA成長投資枠、未成年口座(法人口座は不可)
- 決済方法: 円貨決済のみ
- 抽選方式: コンピューターによる無作為な完全抽選
- 最大のメリット: 楽天銀行との連携サービス「マネーブリッジ」が強力です。これを設定していれば、証券口座の残高だけでなく楽天銀行の残高も合算して買付可能額として計算されるため、事前の煩雑な資金移動が不要になります。
SBI証券での応募ルールと必勝戦略
国内口座数トップのSBI証券でも申し込みが可能です。事前に外国株式取引口座の開設が必要となります。
- 対象口座: 一般口座、特定口座、NISA成長投資枠
- 決済方法: 事前の入金手続きが必要
- 抽選方式(独自の強み):
- 完全抽選枠(30%): 資金力に関係なく無作為に抽選。
- IPOチャレンジポイント枠(15%): 過去のIPO落選で貯まったポイントを多く使った人から優先的に配分。長年ポイントを貯めてきた熟練投資家にとっては、当選確率を極大化できる強力な武器となります。
NISA(成長投資枠)を活用するメリットと罠
スペースXのIPOは、新NISAの「成長投資枠」(年間240万円上限)を活用して購入することが可能です。ただし、強力なメリットと同時に「罠」も存在するため、慎重な判断が求められます。

メリット:譲渡益の完全非課税化
NISA口座で当選し、上場後に株価が急騰した場合、得られた利益(キャピタルゲイン)に対する約20%の税金が「完全非課税(税率0%)」となります。初値が公募価格を大きく上回る展開になれば、資産形成において圧倒的な恩恵を受けられます。
デメリット(罠):損益通算ができない
IPO投資はボラティリティ(価格変動)が激しく、公募価格を割れて損失が出るリスクも当然あります。NISA口座で損失が出た場合、税制上「なかったもの」とみなされるため、他の口座(特定口座など)で得た利益と相殺する「損益通算」や「損失繰越」が一切できません。
万が一のリスクヘッジを重視する場合は、損失を他の利益と相殺できる特定口座での申し込みも有力な選択肢となります。
目論見書(S-1)から読み解く事業構造と将来性
2026年5月20日に公開された目論見書(S-1)により、これまで非公開だった財務構造が明らかになりました。
収益の柱はロケットではなく「スターリンク」
2025年度の全社売上高は187億ドル(前年比33%増)に達しました。最も重要なポイントは、最大の収益源がハードウェア事業ではなく、衛星通信サービス「スターリンク」へ移行している点です。
- コネクティビティ(スターリンク): 営業利益44億2,000万ドル。全社売上の約61%を占める高収益の継続課金ビジネス。
- スペース(ロケット打ち上げ): 営業赤字6億5,000万ドル。次世代ロケット「スターシップ」の開発費が重荷。
- 人工知能(xAIなど): 営業赤字63億5,000万ドル。莫大なインフラ投資が先行。
AIインフラへの巨額投資による赤字拡大
強力な本業の稼ぎがある一方で、2025年度の最終損益は49.4億ドルの純損失となっています。この最大の要因は、イーロン・マスク氏が立ち上げたAI企業「xAI」との統合と、それに伴うデータセンター(GPUクラスター)などへの天文学的なインフラ投資です。
今回の巨額なIPO資金調達は、AI開発競争において絶対的優位を確立するための、緊急の資本注入メカニズムとして機能しています。
投資家が知っておくべきIPOのリスクと関連銘柄への影響

キーマンリスクとガバナンスの懸念
IPO後もマスク氏は議決権の85%超を独占する構造(デュアルクラス)となります。テスラなど複数の事業を手掛けるマスク氏個人への依存度が極めて高い「キーマンリスク」が存在しますが、会社側は彼に対するキーマン生命保険を掛けていないことも判明しています。
スリバー・ディールの罠
今回市場に放出される株式(浮動株)は、発行済株式総数のわずか3%から5%程度です。需要が供給を圧倒する「スリバー・ディール」と呼ばれるこの構造は、上場直後の株価を意図的に釣り上げる要因となります。
上場後に市場から直接買う(セカンダリー投資)のは高値掴みのリスクが伴うため、日本の投資家にとっては、証券会社の抽選を通じて「公募価格」で取得することが極めて重要な戦略となります。
関連銘柄への波及効果
スペースXの上場は他の銘柄にも大きな影響を与えます。
- テスラ(TSLA): 資金がスペースXへ流出する懸念で株価が下落する場面がある一方、巨額の資金を得たスペースXがテスラの有力な顧客になるという好材料の側面も持ち合わせています。
- KDDI(9433): スターリンクを活用したサービスを日本で展開しており、関連銘柄として直接的な恩恵を受ける可能性があります。
今後のIPOスケジュールとまとめ
現在のところ証券会社での具体的な日程は未定ですが、グローバルな進行スケジュールは以下の通り見込まれています。
- 6月1日〜5日: 公開価格の仮条件提示
- 6月8日〜10日: ブックビルディング(需要申告)
- 6月11日: 公募価格決定
- 6月12日: ナスダック市場へ上場
日本の個人投資家は、ブックビルディングの短い受付期間に備え、事前に証券口座の開設や十分な資金の準備を完了させておく必要があります。
スペースXのIPOは、高い将来性と巨大なリスクが共存する歴史的な投資機会です。NISAの活用や各証券会社の特性を理解し、自身の許容リスクを見極めた上で慎重かつ戦略的に参加を検討しましょう。