売上は伸びているのに、営業利益は赤字。2026年7月15日に発表された北の達人コーポレーション2930の2027年2月期第1四半期は、見出しだけで判断しにくい決算です。
連結売上高は3,209百万円で前年同期比23.6%増。一方、営業損失は102百万円で、前年同期の営業利益240百万円から赤字になりました。ここだけを見ると悪化に見えますが、会社は新規顧客獲得費の先行増加と、受注済み・未出荷の注文である受注残を理由に挙げています。
個人投資家が見るべきなのは、「赤字だから悪い」「増収だから良い」の二択ではありません。D2CやEC型の企業では、広告費、定期売上、受注残、通期予想を分けて確認しないと、短期損益と事業の進み方が混ざります。
1Qは売上増と営業赤字を同時に見る

北の達人の2027年2月期第1四半期は、連結売上高3,209百万円、営業損失102百万円、経常損失95百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失76百万円でした。前年同期は売上高2,596百万円、営業利益240百万円だったため、増収と赤字転落が同時に起きています。
ここでまず確認したいのは、通期予想が修正されたかどうかです。決算短信では、2027年2月期通期予想について、売上高15,962百万円、営業利益1,059百万円、当期純利益734百万円が示され、直近に公表されている業績予想からの修正はないとされています。
つまり、会社側は1Qの赤字をもって通期見通しを変えたわけではありません。ただし、予想修正なしは安心材料そのものではなく、次の四半期で広告投資と受注残がどのように売上・利益へ反映されるかを見るための基準です。
投資判断では、1Qの営業損失だけを切り取らず、通期予想、2Q累計予想、説明会資料、次の決算での進捗をセットで見る必要があります。
新規顧客獲得費はどこで効くのか

会社は主力事業「北の快適工房」で、新規顧客獲得が過去最高水準で推移したと説明しています。自社サイト等の新規顧客獲得人数は直前四半期比44%増で、6四半期連続の増加です。2026年3月には月次、4月19日には日次で過去最高の新規顧客獲得人数を記録したとも記載されています。
一方で、新規顧客獲得が増えるほど、広告や販売促進にかかる費用は先に出やすくなります。北の快適工房は定期購入顧客による売上が大きい事業構造です。新規獲得費は短期利益を押し下げる費用であると同時に、将来の定期売上の入口にもなります。
だからこそ、見るべき数字は営業利益だけではありません。新規顧客獲得人数、販売促進費等、定期購入の継続、LTV、解約、商品供給体制を分けて見ます。広告費が増えたという事実だけでは、投資効率が良いか悪いかまでは分かりません。
ここを混同すると、広告投資をすべて悪材料として見たり、逆に売上増だけで楽観したりしやすくなります。
受注残を織り込むと見え方が変わる

もう一つの論点が受注残です。会社は、一部商品の需要増に対して生産が追いつかず、受注済み・未出荷の注文が発生したと説明しています。この場合、注文は入っていても、出荷や売上計上のタイミングがずれることがあります。
決算短信では、受注残を織り込んだ参考値も示されています。個別業績ベースでは、受注残を織り込んだ場合の売上高は3,002,891千円、営業利益は27,284千円、経常利益は31,873千円、四半期純利益は21,901千円です。実績値では営業損失でしたが、受注残を織り込むと各段階利益は黒字になります。
ただし、この参考値をそのまま実績の代わりに扱うのは危険です。受注残は、いつ出荷されるか、キャンセルがないか、供給体制が改善するかで見え方が変わります。大事なのは、会社がなぜ参考値を出したのかを理解しつつ、次の四半期で本当に売上計上と利益改善につながるかを確認することです。
1Qだけで結論を出すより、受注残が2Q以降にどう動くかを見る方が実務的です。
次に見る公式資料と日程

次に見る順番はシンプルです。まず、2027年2月期第1四半期決算短信で、連結実績、個別業績、受注残参考値、通期予想修正の有無を確認します。次に、会社サイトに掲載される決算説明資料や説明会内容で、広告投資、新規顧客獲得、商品供給、定期売上の説明を確認します。
IRカレンダーでは、2026年7月15日に第1四半期決算短信、8月31日に中間配当基準日が掲載されています。配当予想は年間3.50円で、直近予想からの修正はないとされています。
また、北の達人は2026年4月に、プライム市場上場維持基準への適合に向けた計画も公表しています。そこでは流通株式時価総額100億円以上に向け、収益力拡大、進捗説明を含む開示内容、投資家との対話機会の拡充などが挙げられています。1Q決算は、この計画の進捗を見る材料にもなります。
北の達人2930の1Qは、赤字だけでも、増収だけでも読めません。広告費が先に出る事業構造、受注残による売上計上のずれ、通期予想修正なし、説明会での補足。この4つを公式資料で順番に確認する決算です。
本記事は情報整理であり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。投資判断は会社公式資料、決算説明資料、リスク許容度を確認したうえで行ってください。

